第40話 月をさす指

最終更新: 2019年5月19日




 ラマダン月も半ばになった。特にこの数日は日中40度を超す日々で、濡れたままの髪も、熱風に吹きさらせばあっという間に乾いてしまう。


 マグリブ(مغرب)、すなわち日没のお祈りがあって、と同時に、断食明けの食事が始まる。夜に食べる朝ごはん。今年はマラケシュでは19h30ころ。そしてしばしの後、21h00前ころだろうか。またイシャ(عشاء)のお祈り。空にはラマダンが折り返しに近づいたことを知らせる満月。



 この月の間、夜のお祈りの後に再び工房を開けている。毎年恒例の、よく言えば祝祭のようなムードが漂う夜間仕事の時間。ならばもしも悪く言うとしたら? ひとりがんばってみても、すべてが空回り。


 カナリア色の染料をちょうだい。渡されるのは山吹色。ここ、ビーズが取れてる、この水色の。お直しで使われるのは濃いターコイズブルー。


 酷暑の中、太陽が出ている間は一切の飲食を断つ。誰しも意識が朦朧とするのは自然なことだろう。こうなったら堪忍して、このリズムに乗ってしまおうとばかりに職人たちの失敗に一緒になって笑っている。


 まあ、まずはカオカオ(ピーナッツ)でも食べなさい、だなんて。始まる仕事も始まらない。進めるべきことは進まないまま、夜はどんどん更けていく。






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